離婚するタイミング
離婚したいと思ったら、いつがベストのタイミングなのでしょうか。離婚は大きな人生の転機となります。これまでの生活基盤が大きく変化し、生活水準にも影響を及ぼします。あなたに子どもがいれば、離婚後も子どもを養育するための十分な資金を確保する必要がありますし、子どもの進学などの問題もクリアにする必要があります。
また、離婚の原因が夫や妻の暴力などのDVの場合と、生活上のすれ違いを理由とする場合では、相手の気持ちを配慮する必要性も違ってきます。夫婦が離婚について話し合いをもつことで、離婚の原因が解決することも少なくはありません。
さらに、離婚後の生活についても考慮が必要です。あなたが専業主婦(夫)の場合、離婚後は収入源が断たれてしまうことで生活が苦しくなるかもしれないからです。
離婚と一言で言っても、それぞれが置かれている状況によって、最適なタイミングは異なってきます。今回は、離婚に最適なタイミングと考慮すべき点について解説します。
子どもを持つ母親が離婚をする場合のタイミング
(1)子どもへの影響
離婚によって、これまで住み慣れた自宅を離れて、子どもをひきとって別の場所で暮らす場合は、子どもを転校させる必要性がでてきます。
受験を控えている時期に親が離婚してしまうと、精神的バランスを崩す危険性がありますので、避けた方が無難です。
また学期の途中での離婚では子供に転校や苗字の変更などのストレスを与えてしまい、子どもに悪影響がおよぶ危険性があります。子どもの精神的な影響を考慮すれば、小学校や中学校、高校や大学などの入学前であれば、転校の必要がなく、例え苗字が変わっても周囲に気付かれにくいので、ベストなタイミングといえます。
(2)子の養育費
養育費とは、子どもを育てるために必要な費用のことで、衣食住の費用や教育費、医療費、娯楽費などが含まれます。厚生労働省の調査によれば、離婚に際して、養育費の取り決めをしている世帯は38.8%と少なく、なかでも、夫婦間の話し合いによって離婚する「協議離婚」では、養育費の取り決めをしている割合がさらに低くなることがわかっています。
取り決めをしなかった理由については「相手に支払う意思や能力がないと思った」が 47%と最も多く、次いで、「相手と関わりたくない」が 23.7%となっています。一方、養育費の取り決めをした場合の受給状況については、現在も受けていると回答したのはわずか19%で、一度も受け取ったことがないは59.1%にものぼります。養育費は、子どもを育てるのに非常に大切なお金です。
支払状況が悪くとも、離婚前にきちんと取り決めをしておくようにすべきです。養育費に関しては、①支払金額、②支払日、③支払い期間、④支払方法についてきちんと決めておき、その内容を公正証書で作成するようにしましょう。
公正証書には、強制執行認諾文言といって、支払いが怠れば強制執行をしてもかまわない旨の文言を入れることができ、この文言があれば、裁判をせずに、相手の財産や給与を差し押さえて強制的に回収をすることができます。ただ、公正証書を作成するには、原則として夫婦が一緒に公証役場に行く必要があります。そのため、子どものいる夫婦が離婚するのは、公正証書を作成してからの方がベターです。離婚後に公正証書を作成しようにも、相手がこれに応じなければ、公正証書を作成することができないからです。
(3)仕事の確保
離婚をすると、これまでの生活水準よりも下がることになるため、離婚の前に求職活動を行い、就職先をみつけておく必要もあります。さきの厚生労働省の調査によれば、母子家庭の81.8%が就業していますが、このうち正規雇用されているのは55.2%にとどまります。平均年間収入をみると243万円で、このうち就労による年間収入は1人当たり平均200万円となっています。
これは、父子家庭の平均年間収入420万円(就労比率は85.4%、うち68.2%が正規雇用)と比べて、母子世帯と父子世帯で大きな格差があります。また全世帯の平均所得545万4000円と比べて大きな開きがあることから、周囲の世帯に比べ、母子家庭は貧困状態にあるといわれています(相対的貧困)。そのため、離婚経験のあるシングルマザーの多くは、「離婚前に資格や就職を計画的に進めた方がよい」といいます。離婚後の生活に困窮しないためにも、離婚前の準備が大切です。
離婚に際して受け取れるお金は?
離婚に際してもらえるお金には、大きく①財産分与、②慰謝料の2つがあります。
(1)財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を分けることを言います。離婚原因にかかわらず、婚姻期間中に、夫婦が共同で築き上げた財産は、夫婦が1/2ずつ受け取る権利があります。財産分与の対象となる財産は、具体的には、夫婦が協力して購入した家や車、有価証券、高額な宝飾品や美術品、家財道具などがあげられます。
また夫婦いずれかの名義であっても、結婚してからの預貯金や保険金なども財産分与の対象となります。さらに、将来受け取る予定の年金や退職金なども、婚姻期間に相当する分は財産分与の対象となります。住宅ローンなどの借金も婚姻期間中のものであれば、財産分与の対象となりますので注意が必要です。
逆に、結婚前に、それぞれが蓄えていた財産や、嫁入り道具など結婚に際して実家からもらってきた財産、結婚後であっても自分の親などから相続によって取得した財産等については、夫婦共有財産とはいえませんので、財産分与の対象から外れます。共有財産を分ける場合は、どのような財産があるかを入念に調べておく必要があります。夫婦で話し合う財産は、いわば申告制ですので、相手に隠されてしまえば財産分与の対象外となってしまいます。
離婚の話を切り出す前に、必ず相手の財産状況を正確に調べておくようにしましょう。
(2)慰謝料
離婚をすれば慰謝料が必ずもらえるわけではありません。慰謝料は、相手の行為によって受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金をいいます。そのため、慰謝料をもらうには、相手が浮気をした、暴力を振るうなどの不法行為があることが必要です。下に、慰謝料請求が認められるケースと認められないケースをまとめておきます。
慰謝料請求が認められるケース | 慰謝料請求が認められないケース |
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相手の浮気などを理由に慰謝料を請求した場合は、事前に証拠を集めておくようにしましょう。
(3)その他
離婚前に、冷却期間として「別居期間」を設ける方もいらっしゃいます。別居中も、夫婦に変わりはなく、夫婦には扶助義務と言って、相手を経済的に養い補助する義務があります。これは別居期間中であっても例外ではありませんので、もし、別居期間中に生活費を受け取っていなかった場合には、未払い分の生活費(婚姻費用)も忘れずに請求するようにしましょう。
シングルマザーが受け取れる給付金
シングルマザーが受け取れる給付金や助成金には、①児童手当、②児童扶養手当、③医療費助成制度、③住宅手当などがあります。児童手当は、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方を対象に支給される手当で、子どもが3歳未満の場合は一人につき月額1万5千円、3歳以上、小学校卒業までは、子ども2人まで一人につき月額1万円、3人目以降は一人につき月額1万5千円、中学生の場合は、一人につき月額1万円が支給されます。
一方、児童扶養手当は、母子手当ともよばれ、父母の離婚や父または母の死亡等により一人親となった児童を対象に支給される手当で、全額支給される場合は子ども1人目が42910円、2人目が1万円、3人目が6080円支給されます。例えば、中学生の子ども1人と、小学生の子ども1人がいる母子世帯の場合は、児童手当が2万円、児童扶養手当が5万2910円の計7万2910円を受け取ることができるわけです。ただし、児童手当、児童扶養手当ともに収入制限がありますので、確認が必要です。
この他、地方自治体によっては、医療費の一部を助成する医療費助成制度や住宅手当の支給なども行われています。
離婚原因別にみる離婚のタイミング
(1)不貞行為を理由に離婚する場合
不貞行為とは俗にいう浮気や不倫のことです。不貞行為は民法条の離婚原因とされていますので、話し合いで離婚の合意が得られない場合は調停を経て、離婚裁判を起こすことも可能です。
この際、慰謝料を請求することもでき、50万~300万円程度の慰謝料を認めてもらえる可能性もあります。ただし、裁判で相手に不貞行為があったことを証明する責任はあなたにあります。この準備はできていますか。
離婚はもとより慰謝料請求をしていくうえで、証拠の収集は非常に重要です。具体的には、配偶者と不貞相手がラブホテルに出入りしている写真や、宿泊旅行の証拠、メールのやり取り、会話の録音等が不貞行為の証拠となりますので、まずは証拠を収集してから離婚を切り出すのがベストです。
(2)DVを理由に離婚する場合
夫や妻から肉体的・精神的虐待を受けている場合は、すぐにでも身の安全を確保できる場所に避難すべきです。避難場所を確保できていない状態で、離婚の話しを切り出すと、相手が逆上して激しい暴力を振るわれる危険性があるからです。なお、DVも、民法上の離婚原因とされ、慰謝料を請求することもできます。ただし、DVがあったことを証明する責任はあなたにありますので、ケガや傷跡を写真に残したり、暴言を吐かれている現場の音声を録音したり、また通院記録や診断書をとっていたり、第3者に証言を求めるなどして、証拠の収集もしておくことが大切です。
まとめ
このように、離婚に際して検討すべきことは色々あります。これらの中から、貴方が何を重要視するのか、それに応じて離婚手続を進めてください。私たちは離婚案件に関しまして豊富な解決実績がございます。ぜひ一度ご相談にいらしてください。


温和な風貌からは想像できない情熱的な事件処理と、40年を超える弁護士実績で、生涯現役を貫く。弁護士業の傍ら、追手門学院大学理事長、学校法人追手門学院大学の学長も兼ねる。


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