離婚にかかる費用とお金がない場合の対処法について解説
離婚全般離婚するときに、意外と「お金」がかかります。
お金を用意しておかないと離婚協議や調停などで充分な対策ができず、不利になってしまう可能性が高くなります。
今回は離婚の際にどのようなことにお金がかかるのか、またどのくらい準備しておくと良いか、お金がない場合の対処方法について解説します。
目次
離婚にかかる費用
夫婦双方の話しあいで離婚に合意する協議離婚では、離婚届を役所に提出すれば離婚は成立しますので、離婚自体にかかる費用はゼロです。 しかし、離婚の話しあいに備えて別居をする場合や、別居に際し未成年の子を連れて行く場合、また弁護士に依頼する場合などには、それ相当のお金が必要となります。
別居中の生活費を相手に請求することはできるか?
夫婦は互いに、同程度の生活水準を維持するために助け合う義務があるとされています。
例えば妻が専業主婦で、夫の収入で生活をしている場合は、離婚を前提に別居する場合であっても、夫は妻に対し、同居時と同等の費用を負担しなければなりません。
これを婚姻費用といいます。
つまり、別居中であっても、収入の低い者は高い者に対して婚姻費用の支払いを求めることができるわけです。
この婚姻費用ですが、夫婦間の話しあいで金額を決めることもできますが、話しあいで金額が決まらない場合や、相手が支払いに応じない場合には、家庭裁判所へ調停(婚姻費用の分担請求調停)を申し立てることができます。
調停では、調停委員を仲介役として、夫婦双方の意向に基づく話しあいで手続きが進められますが、その際、夫婦の資産や収入、支出など一切の事情を考慮して、解決策が提示されることになります。
なお、調停においても合意に至らない場合は、審判手続きに移行し、審判によって結論が下されることになります。
婚姻費用の金額の相場は?
平成29年度の司法統計では、婚姻費用の金額として多い順から月額4万円以上6万円以下が18%、10万円以上15万円以下が17%、6万円以上8万円以下が15%、8万円以上10万円以下が13%となっています。
この婚姻費用には、家賃や光熱費、食費や医療費などのほか、相当の交際費なども含まれます。
調停や審判で決まった婚姻費用については、支払いが滞れば、調停調書や審判書に基づいて強制執行をすることができます。
つまり、相手が支払ってこない場合は、相手の給与などの財産を差し押さえて、強制的に回収することができるというわけです。
ただ、調停期間中や調停後支払いが開始されるまでの間、もしくは相手が支払ってこないことも想定して、別居にかかるある程度の費用は確保してから、別居に踏み切るのが安全だといえます。
別居となると、新たに部屋を借りる必要があり、当面の家賃だけでなく、敷金や礼金、また引っ越し費用や、家事道具の購入費用などある程度まとまったお金が必要となってきます。
最低でも、家賃の5倍程度の金銭は初期費用として必要となることを覚えておきましょう。
別居に際し、子どもを連れて行く場合の費用は?
夫婦の婚姻中は、未成年者の子どもに対し、夫婦が共同して親権を行使しますが、離婚後は、夫婦共同親権は認められず、夫婦の一方を親権者と決める必要があります。
離婚後に親権を持ちたい場合は、別居に際して子どもを連れて行くようにしましょう。 ただし、配偶者に無断で子どもを連れ去ることは、その後の親権者の決定に際し不利に働く可能性が高いので避けた方が無難です。
では子どもを連れて別居した場合、配偶者に対し、養育費を請求することはできるのでしょうか。
もちろん、別居をしていても親子関係に変わりはありませんから、養育費の支払いを請求することができます。
では養育費の相場はいくらでしょうか?
家庭裁判所では、先の婚姻費用の算定において、子の有無も考慮して決定しています。
家庭裁判所が一つの目安として公開している養育費・婚姻費用算定表では、子がいない専業主婦が年収250万~350万円の夫に請求できる婚姻費用は4~6万円、年収350万~500万円の夫に対しては6~8万円の婚姻費用を請求できるのに対し、14歳までの子が1人いる場合は、年収300万円の夫に対して婚姻費用として6~8万円請求できることになります。
つまり同じ年収でも子どもの有無で婚姻費用の額は変わってくることになります。
別居費用以外にも必要なお金は?
夫婦双方が話しあいで離婚に合意できれば、離婚届を役所に提出すれば離婚は成立しますから、手続き自体に費用はかかりません。
しかし、離婚そのものの合意が得られない、離婚自体に合意はあるものの、離婚条件でもめている場合などは、家庭裁判所の手続きが必要となるため、裁判所に払う手数料が必要となってきます。
離婚調停に係る費用 | 収入印紙1200円分 予納郵券代1000円程度 |
離婚裁判に係る費用 | ・離婚請求・親権者の指定だけの場合→1万3000円分の印紙 ・離婚請求に加えて、財産分与の申立てもする場合→1200円分の印紙を追加 ・養育費も請求する場合→子ども一人につき1200円分の印紙を追加 ・慰謝料請求も併せて行う場合→離婚請求の手数料(1万3000円)と請求金額により算出される手数料を比較して多い方の額の印紙 予納郵券代5000~7000円程度 |
弁護士に離婚手続きを依頼した場合の費用は?
有利な条件で離婚をしたい場合や、相手が既に弁護士を雇っている場合、裁判で離婚を争う場合などには、弁護士に依頼するのがベストです。 弁護士費用は、事務所ごとに決定されるため、いくらかかるとは一概には言えませんが、一応の目安を下記に記載します。
①相談料 | 無料~30分5000円程度 |
②着手金 (弁護士に事件を依頼した段階で支払うもの) |
・離婚交渉で20万円〜50万円の範囲内。 ・離婚調停の場合は20万円〜50万円の範囲内。 ・離婚訴訟をの場合は、離婚と親権者の指定で、30万円〜60万円。これに財産分与や慰謝料も併せて請求する場合は、請求額に応じた費用が加算される。 |
③成功報酬 (事件が成功に終わった場合に、事件終了の段階で支払うもの) |
着手金と同程度 |
④その他 | 実費(交通費など)や日当などが必要 |
お金がないと離婚できない?
手元にどうしてもお金がない場合には離婚できないのでしょうか?そういうわけではありません。
世の中には、お金がなくても離婚して思い通りの条件を勝ち取っている方もたくさんいます。
たとえば相手ともめなければ、同居のままお金をかけずに離婚協議を進め、すんなり協議離婚できる可能性もあります。
また条件を満たせば、弁護士費用を法テラスが立て替えてくれることもあります。
(1)法テラスの利用条件
法テラスとは日本支援センターの呼称で、国が設置した法律相談窓口です。 法テラスでは無料相談だけでなく、弁護士に支払う費用が工面できない人に対し、弁護士費用の立替えなどの民事法律扶助業務も行っています。 ただし、利用に際しては月収が一定額以下であること、預金や不動産、自動車など保有している資産が一定額以下であることなどの条件を満たす必要があります。
なお、条件を満たさない場合でも、弁護士に着手金を分割払いして、報酬金は相手から回収できた財産分与や慰謝料などから支払うことにより、弁護士を付けて有利な条件で離婚できたケースもあります。
(2)別居後離婚前でも受けられる支援制度がある?
児童手当:児童手当は中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方を対象に支給される制度なので、離婚前でも受け取ることができます。
母子手当:別居中でも要件を満たせば受給できることもありますので、役所に問い合わせてみるとよいでしょう。
離婚に際してもらえるお金はある?
離婚に際してもらえるお金として(1)財産分与、(2)慰謝料、(3)養育費、(4)年金分割、(5)未払い婚姻費用があります。
(1)財産分与
婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた共有の財産を分けることを言います。 どちらか一方の名義であっても婚姻期間中に築き上げた財産であれば財産分与の対象となります。
財産分与は夫婦1/2ずつというのが一般的です。
(2)慰謝料
慰謝料は離婚をすれば当然にもらえるお金ではなく、相手の不倫やDVなど、相手方に離婚原因がある場合に請求することができます。 不倫の場合の慰謝料の相場は100万~300万円とされています。
(3)養育費
未成年の子が自立するまでに必要とされる費用のことです。
離婚をしても子にとって親であることに変わりはありませんので、子への養育義務はあります。
子ども一人で月額4~6万円、二人で月額8~10万円が相場といえます。
(4)年金分割
婚姻中に支払った夫婦の一方の厚生年金を他方に分割することです。
熟年離婚など婚姻期間が長い夫婦の場合、必ず年金分割を受けるようにしましょう。
例えば専業主婦が会社員の夫の年金を分割する場合、2008年4月1日以降の婚姻期間については、夫の厚生年金の標準報酬の2分の1が自動的に妻の標準報酬として分割を受けることができます(夫の同意は不要)。
2008年4月1日以前の婚姻期間については、夫婦間の話し合いにより最大2分の1を限度として自由に分割割合を決めることができます。
(5)未払い婚姻費用
別居期間中に相手が生活費の送金を怠っていた場合には、離婚に際して、その未払い分の生活費を請求することができます。
まとめ
離婚の際、確かにお金があると安心ですので、できるだけ多く手元にお金を貯めておくべきです。
ただお金がなくても離婚は可能ですので、諦める必要はありません。 相手に婚姻費用を払わせたり、あるいは公的機関の扶助制度を上手に利用することで、離婚の手続きを進めることもできます。 お困りの際には弁護士が状況をお伺いして最適な対処方法をアドバイスいたします。
お気軽にご相談下さい。