不倫相手を妊娠させてしまった場合に生じる問題と対処法を紹介
慰謝料請求不倫について、報道やドラマなどでもよく取り上げられますが、実際に不倫をしてしまい、万が一、不倫相手を妊娠させてしまったような場合には、どういう問題が生じるでしょうか。
不倫相手との関係における問題だけでなく、自分自身の配偶者との間にも複雑な問題が生じることになります。
今回は、不倫相手が妊娠した場合の対処法についてご説明します。
目次
不倫相手との間で生じる問題
不倫相手から妊娠をしたことを告げられ、お腹の中の子が、自分の子であることがわかったら、まず子どもを産むのか、産まないのかを不倫相手と話し合うことになります。
中絶をした場合に生じる問題
あなたや不倫相手に経済力があれば、産んで育てることも可能ですが、いずれにも生んで育てるだけの経済力がなければ、人工中絶をしなければならないこともあります。
人工的な妊娠中絶手術は、いつでも出来るわけではなく、母体保護法によって妊娠22週未満(妊娠21週と6日)までと決められています。
それ以降は母体にかかるリスクが大きいことから、中絶手術は認められていません。
また妊娠22週未満であっても、中絶手術を行う時期により、初期中絶(妊娠12週未満)と中期中絶(妊娠12週~22週未満)とに分かれ、中期中絶では母体へのリスクが大きくなるとされています。
初期中絶(妊娠12週未満) | 10分~15分程度の手術で通常は日帰りで行われる。 |
中期中絶(妊娠12週~22週未満) | 数日間の入院が必要。 |
中期中絶では、役所に死産届の提出が法律で義務付けられています。
妊娠12週以降は、例え中絶であっても死産とみなされ、7日以内に市区町村役場へ死産届を提出し、死胎火葬許可書もしくは死胎埋葬許可書の交付を受ける必要があります。
なお、死産届を提出する必要がありますが、戸籍には記載されません。
では不倫相手が中絶した場合、どのような問題が生じるのでしょうか。
まず、人工的な妊娠中絶手術には、基本的にパートナーの同意書が必要となります。
中絶費用ですが、初期中絶で10万~15万円程度、中期中絶で40万円程度かかるといわれています。
望まない妊娠や経済的な理由による中絶手術の場合、健康保険は適用されませんので、全額自己負担ということになります。
また、中期中絶の場合、数日間の入院が必要となりますが、自己都合で中絶手術を選択しているので生命保険の適用もありません。
そのため、不倫相手が中絶する場合、少なくとも中絶にかかる費用の半額はあなたが負担する必要があります。
中絶にかかる費用の半額を負担すればすむというものではありません。
中絶によって不倫相手の心身は深く傷つけられ、それを金銭で慰謝する必要も生じる可能性があります。
つまり慰謝料請求です。
たしかに、不倫とはいえ、双方が合意の上で肉体関係をもち、それによって妊娠をしたからといって、それ自体、不法行為とはなりません。
しかし、妊娠は女性にとって身体的にも精神的にも、また経済的にもリスクが大きく、相手となる男性は、そうした女性が受けるリスクを少なからず軽減するための行為をする義務があります。
この義務に違反した場合は、男性側に慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
例えば、産む産まないの判断を女性側にゆだねた場合や、妊娠の報告を受けても何の反応もしない場合、一方的に中絶を要求する場合などは、慰謝料の支払いを命ぜられるかもしれません。
子どもを産む場合に生じる問題
では、不倫相手が子どもを産むことを選択した場合は、どのような問題がしょうじるのでしょうか。
大きく、(1)認知と(2)養育費が問題となります。
(1)認知
認知とは結婚していない男女の間に生まれた(もしくはこれから生まれる)子どもを自分の子どもであることを認めることをいいます。
母と子の関係は出産によって当然に生じるものとされますので、認知の問題は基本的には生じませんが、父親は、不倫相手との子を法律上、自分の子とするには認知をする必要があります。
認知には、任意認知と、強制認知という2つの方法があります。
①任意認知
任意認知とはその字のごとく、自発的に自分の子どもであることを認めることをいいます。
子どもが未成年の場合は、母親や子どもの同意は必要なく、父親が届出人となって認知届を父親もしくは子どもの本籍地、または父親の所在地のいずれかの市区町村役場に提出すれば、出生の日から効力が発生します。
子どもが成人している場合は、子どもの承諾書が必要となります。
一方、これから生まれてくる子を認知する場合は、母親の同意が必要で、父親が届出人となって母親の本籍地の市区町村役場に認知届に母親の承諾書を添えて提出すれば、出生の日から効力が発生します。
これを胎児認知といいます。
婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、母親の戸籍に入ります。
認知がなされない限り、子の「父」の欄は空欄のままです。
任意認知をすれば、子の戸籍には、空欄だった父の欄に、父の氏名がのり、身分事項の欄に、認知日、認知者(父親)の氏名、認知者(父親)の戸籍などが記載されます。
父親の戸籍にも、身分事項の欄に、認知日、認知した子の氏名、認知した子の戸籍が記載されます。
そのため、認知をすると、戸籍の記載からいずれ配偶者に知られることになります。
②強制認知
結婚していない男女の間に生まれた子を父親が任意認知しない場合は、裁判所の手続きを利用して、父親に認知するよう請求することができるとされています。
これを裁判認知、または強制認知といいます。
強制認知には、家庭裁判所の認知調停の申立てと、裁判所へ認知の訴えを提起する方法があります。
家族間の問題は、まずは話し合いによる解決が前提となりますので、離婚の場合と同様、強制認知でも調停前置主義が採用されています。
ただし、すでに父親が死亡している場合は、話し合いによる解決は不可能であることから調停を飛ばして、直接、裁判所へ認知の訴えを起こすことができるとされています。
つまり、自発的に認知をしない場合は、子どもから認知を請求される可能性があり、あなたが死んだ後でも、死後3年以内であれば、死後認知が訴えられる可能性があることに注意が必要です。
調停の場合は、父親と子どもが話し合いにより合意し、裁判所がその合意を正当と認められれば、審判が下されます。
審判確定後、10日以内に認知届に審判書等を添付して、市区町村役場に提出すれば、出生の時に遡って効力が発生します。
一方、調停不成立や父親が既に亡くなっている場合は、原告(子など)または被告(父親)の住所地を管轄する家庭裁判所(死後認知の場合は父親の最後の住所地を管轄する家庭裁判裁判所)へ認知の訴えを提起し、裁判所が判断を下すことになります(途中で和解することも可能)。
判決が確定すると、10日以内に認知届に判決書等を添付して、市区町村役場に提出すれば、出生の時に遡って効力が発生することになります。
認知届が提出されれば、あなたの戸籍にも認知の事実が記載されることになりますので、いずれ配偶者に知られることになります。
なお、あなたが死亡した後に認知の訴えが提起され、裁判所が認知を認める判決を下すと、その子は出生の時に遡って、あなたの子と認められることになるので、当然、その子はあなたの相続人の一人として、あなたの遺産を相続する権利が発生します。
そのため、すでに遺産分割協議が終了していても、その子に対し、法律で決められた相続分(法定相続分)に相当する金銭の支払いが必要となりますので、注意が必要です。
(2)養育費
法律上の父子関係がなければ、あなたに、不倫相手との子の養育費を支払う法的な義務は生じません。
そのため、不倫相手は、あなたに子を認知してもらった上で、養育費の支払いを請求してくることが考えられます。
養育費の相場は月額4万程度ですが、本妻との間にも子どもがいる場合は、経済的な負担になります。
養育費の支払いに合意した後、不払いがあれば、不倫相手から養育費の支払いを求める訴訟を提起される可能性もありますので、滞りなく支払っていく必要があります。
配偶者との間で生じる問題
不倫は不貞行為として民法が定める離婚原因になりますので、配偶者から離婚を請求されれば、これを拒否することは難しくなります。
話しあい(離婚協議)や離婚調停に応じなければ、いずれ離婚裁判を起こされ、裁判所の判断で離婚が命ぜられる可能性があるからです。
不倫を理由に離婚をする場合、配偶者はあなたに対し、高額の慰謝料を請求してくる可能性もあります。
過去の裁判例から不貞行為を理由とする慰謝料として100万~300万円が相場とされています。
また配偶者は不倫相手にも慰謝料を請求することが認められていますので、あなたを挟んだ泥沼の三角関係に発展し、心身ともに疲弊してしまうことにもなりかねません。
弁護士に依頼するメリット
不倫(不貞行為)自体が、民法上の不法行為に該当する行為となりますが、万が一、不倫相手を妊娠させてしまった場合には、以上述べてきたとおり、認知という身分関係、養育費そして慰謝料という大きな金額に関する問題が生じることになりますので、本人で対応することは非常に困難であるといえます。
この点、弁護士に依頼すれば、養育費や慰謝料の支払いを免れる可能性こそ低いものの、それぞれについて法的見地から、適切な金額や最善の解決方法を求めることができます。
弁護士は交渉のプロフェッショナルです。
人間関係がこじれてしまった場合、一般的に修復が難しい案件が多いように思われます。
しかし、弁護士が間に入り、適切・適宜な交通整理を行うことにより、修復が可能となる場合が多数あります。
ぜひ一度ご検討いただき、お気軽にご相談いただければと思います。