公正証書
公正証書とは、「公務員である公証人がその権限に基づいて作成する公文書」のことで、真正に成立した文書であるという形式的証明力があることから、極めて強力な証拠力を有する文書とされています。
離婚において、公正証書が作成されるのは、夫婦が協議によって離婚に合意する協議離婚の場合です。
協議離婚は、離婚届を市区町村役場の窓口に出すだけで、成立します。
離婚に際して、夫婦の間に未成年の子供がいる場合は、親権者や養育費を定めるものとされていますが、市区町村役場では、そうした取り決めがなされたかどうかの具体的な審査を行うわけではなく、離婚届に不備がなければ受理されます。
そのため、親権者や養育費について口約束で決めただけだった場合、離婚後に、元配偶者が約束を守らないといった形で、トラブルが生じてしまいます。
また、文書の形で約束事を残したとしても、それだけでは証拠力として弱いと言わざるを得ません。
そこで、公正証書という形で、協議離婚に際して決めたことを書き残すという方法が望ましいわけです。
離婚の公正証書は、主に離婚による財産給付について記載するため、「離婚給付等契約公正証書」と呼ばれています。
具体的な記載内容は次の9つです。
- 1、離婚の合意
- 2、親権者と監護権者の定め
- 3、子供の養育費
- 4、子供との面会交流
- 5、離婚慰謝料
- 6、離婚による財産分与
- 7、住所変更等の通知義務
- 8、清算条項
- 9、強制執行認諾条項
この中で、特に公正証書によって定めることに意味がある記載事項は、3、子供の養育費、5、離婚慰謝料、6、離婚による財産分与です。
これらの事項を協議離婚に際して明確に定めなかったために、後々トラブルになったという相談が少なくありません。
相談
子供は二人いてまだ小学生です。
離婚時は、元夫との間で念書という形で、毎月の養育費の支払い額を定めました。
離婚直後は、私が催促すれば、養育費が振り込まれていたのですが、ここ数か月の間は、催促しても無視され、養育費が支払われていません。
元夫に対して養育費の支払いを請求するにはどうしたらいいでしょうか?
回答
離婚に対して、念書という形で、取り決めをしたとのこと。
しかし、念書を書いただけでは、今回ご相談いただいたように、相手が無視している場合は、養育費の回収が難しくなります。
もちろん、お子様が成人するまでは、元夫には養育費を支払う義務があります。
元夫に養育費の支払いを求めるためにも、改めて協議を行う。
あるいは調停か裁判を行うという形になるでしょう。
いずれにしても、ご相談者様おひとりで対処しても埒が明かないと思われますので、弁護士にご相談ください。
コメント
養育費の支払いを確実なものにするためにも、公正証書を作成しておくべきなのです。
相談
離婚の原因は、元夫が私の友人の女と不倫していたことです。
私は深く傷つき、元夫に慰謝料を求めました。
離婚慰謝料の相場は、よくわかりませんでしたが、とりあえず、100万円は支払うように求め、夫も同意しました。
そのうえで、離婚届を出したのですが、今に至るまで、支払われていません。
元夫に離婚慰謝料100万円を支払うように内容証明を出したのですが、無視されているようです。
元夫の声も聞きたくなく、話し合いなどするつもりはありません。
ただ、離婚慰謝料だけは支払ってほしいです。
どうしたらいいですか?
回答
ひどい話ですね。
まず、離婚慰謝料の相場については、養育費や婚姻費用と異なり、裁判所も参考になる算定表を用意していません。
そのため、どれくらいの額が、離婚慰謝料として適切なのかは個々の事例によって異なります。
ご相談者様の場合は、離婚慰謝料の支払いを求めることができる可能性があります。
ご相談者様が元夫と直接話したくないとのことでしたら、弁護士が代わりに交渉し、適切な離婚慰謝料の支払いを求めます。
ご依頼ください。
コメント
離婚慰謝料の支払いを確実なものにするためにも、公正証書を作成しておくべきなのです。
相談
元夫が元夫名義の家から出ていく形で協議離婚したのです。
子供が小さく引っ越しが難しかったためです。
家の住宅ローンが残っているため名義を変更せず、元夫がローンを支払い続けるという約束でした。
ところが、最近、元夫が住宅ローンを支払っていないことが判明し、元夫の代わりに私が住宅ローンを支払うように銀行から催促されました。
元夫に連絡を取ろうにも、音信不通状態で困っています。
このまま、家を出るしかないのでしょうか?
回答
元夫が住宅ローンを支払わない場合、銀行としては、不動産に設定された抵当権を実行することによって回収を図ることになるでしょう。
これを避けるためには、ご相談者様が、元夫の代わりに住宅ローンを支払う必要があります。
ただ、ご相談者様が、元夫の代わりに住宅ローンを支払っても、不動産の登記名義は、元夫になっている以上、ご相談者様が不動産の権利を主張できない可能性が高いです。
いずれにしても、どう対処すべきか、至急に決定しなければならない状況だと思われますので、弁護士にご依頼ください。
コメント
つまり、元夫名義の不動産を妻に財産分与した形になります。
ただ、不動産の名義を妻に移転してしまうと、住宅ローン債務の期限の利益を喪失させる旨の約款が発動するのが一般的です。
不動産を妻名義にした時点で、元夫が住宅ローンを一括返済しなければならなくなるわけです。
これを避けるために、元夫名義のままで、妻子が住み続けるという形をとるわけです。
この場合、元夫が住宅ローンを支払い続けるという取り決めをすることになりますが、口約束では、この相談事例のように、元夫が反故にすることもあり得ます。
こうした事態を避けるためにも、住宅ローン付き不動産の財産分与については、公正証書によって約束事を明確にしておく必要があります。
具体的には、元夫が住宅ローンを支払い続けること。
そして、元夫が住宅ローンを完済した後で、元夫から元妻に所有権移転登記をすることとし、元妻の権利を保全するために、所有権移転請求権保全の仮登記を設定しておくといった対策を講じておく必要があります。
大阪での離婚の公正証書に関するご相談は川原総合法律事務所にご相談ください
離婚時に作成すべき公正証書は、離婚の原因、ご夫婦やお子様の状況など、抱えている事情により、ひとりひとり異なります。
離婚問題は、一生において何度も経験することではありませんから、ご自身の経験が蓄積されて対応力が上がるものでもありません。
離婚をめぐる複雑な問題を個人で解決しようと試みると、かえって不幸な結果になりかねません。
大阪の川原総合法律事務所の弁護士には、多くの離婚問題を取り扱った経験と、裁判実務の知識と実績があります。
最善の解決策を探るためにも、離婚の公正証書に関するご相談は、大阪の川原総合法律事務所へお問い合わせください。