離婚後に後悔しないために離婚前に知っておきたい3つのお金と対処法
離婚全般離婚と一口に言っても、単に男女が別れるだけでは終わりません。
引越しをして周囲の環境が大きく変わることもあれば、経済的な負担が増えたり、子どもにも影響がでることもあり、まさに離婚は、これまでの生活環境を一変させる大きな出来事なのです。
そのため、数多く離婚問題を解決する中で、「こんなはずではなかった」、「離婚をしなければよかった」といった離婚を後悔する声も聞かれるのも事実です。
今回は、離婚後に後悔しないために、離婚前の対処法についてご説明します。
離婚をすれば生活が苦しくなる?
専業主婦(主夫)などパートナーの収入に依存して生活してきた方が離婚をすると、経済状態が悪化し、生活に困窮するケースが見受けられます。
長期間のブランクがあるため就職先も見つかりづらく、希望の職に就けても、子育ての両立が思うようにいかず経済的にも精神的にもゆとりのない生活に疲弊してしまうことも少なくはありません。
ただ離婚の後悔が経済面に起因するものであれば、離婚前に適切に対処することで回避することも可能なのです。
離婚に際してもらえるお金を知っておこう
離婚に際してもらえるお金には、大きく「財産分与」、「慰謝料」、「養育費」の3つがあります。
言葉自体は聞いたことはあっても、どの程度のお金を請求できるか、一般的な基準がわからず、相手の言いなりになってしまった、あるいはもらえるお金があること自体知らなかったという方もおられますが、これらのお金は今後の生活を左右する大切な資金源となります。
離婚を後悔しないためにも、もらえるお金はしっかりもらいたいものです。
(1)財産分与って?
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に共同で築き上げた財産を公平に分配することをいいます。
①財産分与の対象となる財産
- 婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産:(例)夫婦が協力して購入した自宅や自動車、宝飾品や美術品、有価証券やゴルフ会員権、家財道具など
- 結婚してからの預貯金や保険金:※夫婦の一方の名義でも婚姻期間中に築いた財産であれば財産分与の対象となります。
- 退職金:既に退職金が支払われている場合だけでなく、将来支払われること蓋然性が高い場合も退職金は財産分与の対象となると考えられています。
- 婚姻期間中に契約した住宅ローンや自動車ローン、借金:財産分与の対象とならない財産
- 独人時代の貯金や、独身時代から所有しているもの
- 嫁入り道具
- 相続や贈与などで取得した財産:例えば、婚姻期間中に配偶者の両親が亡くなり、相続財産として不動産を取得した場合、この不動産は財産分与の対象にはなりません。
- 婚姻前の借金
- 別居後に取得したもの
②財産分与の一般的な基準は?
財産分与の割合は、夫婦の話し合いで自由に決めることができますが、一般的には裁判例を参考として決められるケースが多いとされています。
財産分与の割合は1/2ずつというのが原則ですが、財産形成の貢献度に偏りがある場合には、貢献度に応じて割合が決められます。
専業主婦(主夫)であっても、家事は立派な労働であり、内助の功として、財産形成に対する1/2の貢献度が認められますが、家事を全くしない場合などは、1/2の貢献度は認められにくくなります。
③相手の財産を調査する方法は?
自宅や車など目に見える財産は、把握しやすいですが、ヘソクリや隠し口座があった場合は、把握するのが難しくなります。
相手に隠し口座があると疑われるときは、離婚調停の際に、裁判所に対し調査嘱託の申立てをするのも一つの手です。
裁判所が金融機関に対し、相手方の名義の口座の有無や財産状況などの照会をかけてくれます。
離婚後に、隠し財産が発覚した場合は、離婚成立から2年以内であれば、財産分与の請求をすることも可能です。
(2)慰謝料は誰でももらえる?
慰謝料は相手の行為によって精神的苦痛を受けた場合に請求が可能となります。
そのため、離婚では、相手が浮気や不倫をしていた、相手から肉体的あるいは精神的暴力を受けた、生活費の支払いがなかった、性行為を強要された、一方的に離婚を切り出されたなど、相手に不法行為がある場合に慰謝料の請求が認められ、単に性格の不一致や相手の親族との不和などを理由に離婚をする場合には慰謝料の請求は認められません。
①慰謝料がもらえる場合
- 相手の浮気や不倫
- 肉体的・精神的暴力
- 同居の拒否
- 生活費の未払い
- 性行為の強要あるいは拒否
- 一方的な離婚の申し入れなど
②慰謝料がもらえない場合
- 性格の不一致
- 相手の親族との不和
- 宗教上の対立
- 既に夫婦関係が破たん後に相手が浮気や不倫を行った場合 など
③慰謝料の相場は?
相手の浮気や不倫により離婚した場合の慰謝料の相場は100万円~500万円とされています。
この他、相手の肉体的・精神的暴力(DV)が原因の場合は50万円~500万円、同居拒否や生活費の未払いなど悪意の遺棄が原因となる場合は50万円~300万円程度が相場とされています。
(3)養育費とは?
未成年の子どもが自立するまで必要とされる費用のことです。
夫婦は離婚をすれば赤の他人となりますが、子どもは親が離婚しても親子であることに変わりはありません。
また父母はともに、収入に応じて子どもの自立に必要な費用を負担しなければならないとされています。
そのため、子どもと離れて暮らす親は「養育費」の名目で、子の生活に必要な費用を支払う義務があるのです。
しかし、相手に支払う意思がない、相手とかかわりあいたくないなどを理由に養育費の取り決めをせずに離婚をする人が多く、また取り決めをしても相手が支払いをしていないケースもあり、養育費の支払い状況はあまり芳しくないのが現状です。
①養育費が支払われない場合はどうする?
離婚調停で養育費の支払いについての取り決めをした場合は、調停調書に基づき、相手の給与や預金などの財産を差し押さえ、強制的に養育費を回収することができます。
また協議離婚の場合でも、離婚条件についての取り決めを公正証書で作成した場合は、調停調書と同様、公正証書を基に、強制執行が可能です。
養育費の取り決めについて自分たちで書類を作成した場合や、口頭でした場合は、裁判所に対し、養育費の支払いを求める裁判を起こし、勝訴判決を得た上で強制執行をする必要があります。
②相手の勤務先が変わっていたり、どこに預金口座があるかわからない場合は?
調停調書や公正証書を基に強制執行を行う場合、相手の勤務先を知っている、あるいは相手の預金が何銀行の何支店にあるかまでを知っていることが前提となります。
しかし、離婚後に相手が転職したり、預金を他の銀行に移してしまった場合は、強制執行をしても養育費を回収できず、結局は泣き寝入りせざるを得なくなるということも少なくはありません。
そのような窮状を打開するため、2019年5月に民事執行法という法律の一部が改正され、勤務先が不明の場合や、預金口座がわからない場合でも裁判所が市区町村や年金事務所に照会をかけ相手の勤務先に関する情報を取得したり、金融機関に対し、預金口座の有無を回答させたりする制度が新設されました。
この制度を「第3者からの情報取得手続」といいます。
この制度を利用すれば、離婚後に相手が転職していても、給与の差押えができたり、またあなたの知らない相手の預金口座に対し差押えをすることが可能となるので、強制的に養育費を回収することができるようになります。
なお、この制度が利用できるのは2020年4月以降になる予定です。
(4)その他にもらえるお金はある?
この他にも、別居期間中に生活費の未払いがあれば、その未払い分を婚姻費用として請求できたり、婚姻期間中に夫が加入していた厚生年金を分割して妻が受給できる年金分割制度もあります。
また、専業主婦のため経済的自立に時間がかかる、高齢や病気のため、なかなか就職が難しい場合などは、財産分与の割合を増額してもらったり、状況に応じては個別に一定期間、生活費の援助を受けることを請求することも可能です(これを扶養的財産分与といいます)。
離婚後の生活が苦しくならないために、弁護士に依頼するメリット
離婚を後悔する最大の要因は、経済問題です。
とくに専業主婦(主夫)の方が離婚される場合、離婚前に比べ、収入が減少する傾向にありますので、経済的に生活が困窮する危険性があります。
そうならないためにも、離婚の際には弁護士に依頼し、あなたに有利な条件で離婚の話し合いを進めていく必要があります。
弁護士は法律の専門家ですから、離婚に際しあなたがもらえるお金や財産の種類や額についての法的な知識だけでなく、少しでもあなたに有利になるよう相手方と交渉をかさね、合意を勝ち取ることが可能です。
また、合意をえるだけでなく、相手から合意した金額を確実に回収できるよう対処策も講じてくれますので、ご自身で対処されるよりはるかに安全かつ確実です。
まとめ
金銭問題がクリアされても、離婚によって「心細さ」や「孤独感」「喪失感」を少なからず感じられるかと思います。
「こんなときパートナーがいてくれればなあ」と後悔するのは、その心細さのためと言っていいでしょう。
しかし、離婚して今の人生を謳歌している人たちはこのような後悔する瞬間を乗り越えて幸せになっているのです。
後悔しても時間を取り戻すことはできませんので、その気持ちを受け止めながら前を向いて行動していくしかありません。
あなたが進むべき道はシンプルな道1つだけなので、あれこれ悩むこと無くどんどん進んでいきましょう。
私たちも、皆様の後悔が少しでも前向きになるように、単に離婚問題として処理するのではなく、皆様の心に真摯に向き合う事件処理を心がけています。