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不貞行為とは?

「夫が同僚女性とキスをしたから不倫で離婚したい」 「妻が他の男と食事をしたのは浮気だから慰謝料請求したい」 とお考えの方がおられますが、一般的な不倫と法律上の不倫は違います。
この記事では法律上の不倫、つまり不貞行為について解説します。
 

不貞行為とは何か?不倫や浮気との違いとは

「不倫」や「浮気」は、一般的な概念です。
人によって、キスから不倫、二人で食事をしたら不倫など、考え方はさまざまです。
一方で、法律上の不倫は、慰謝料請求や離婚原因になるもので、「不貞行為」のことを言います。
不貞行為とは、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこと」を言います。
「性的関係」とは、性交、射精を伴う口淫やペッティングなどの性交類似行為を指します。
したがって、性的関係を伴わないプラトニックラブ、セカンドパートナー、パパ活などは不貞行為には当たりません。
 

(1)不貞行為に当たる行為

  • 性交
  • 性交類似行為(オーラルセックス、ペッティングなど)

 

(2)不貞行為に当たらない行為

  • キス
  • デート
  • 食事
  • プレゼント

 

不貞行為と法律違反の関係とは

現在の日本では、不貞行為は犯罪には当たりません。
しかし、不貞行為は法律に違反する行為に当たります。
 

(1)不貞行為で慰謝料請求できる理由

法律では、故意(わざと)または過失(うっかり)で不法行為をして他人に損害を与えた場合は、その損害を賠償する責任を負うことが定められています(民法709条)。
これを不貞行為についてみると、夫婦がお互いに負っている「配偶者以外の異性と性的関係を持たない貞操義務」に違反し、配偶者に精神的苦痛という損害を与えたので、この損害を慰謝料というお金で賠償するということになります。
つまり、不貞行為が罪になることはありませんが、他人の権利を侵害する不法行為になるので、慰謝料を支払う義務を負うということです。
 

(2)不貞行為で離婚できる理由

夫婦同士で話し合って離婚をする場合には、理由は何でも構いません。
しかし、相手が離婚に応じず、裁判で離婚を争う場合には、法律で決められた離婚原因が必要です(法定離婚事由)。
法定離婚事由には、次の5つが定められています(民法770条)。
 

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明
  • 回復の見込みがない強度の精神病
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由

 
このように、不貞行為は法律で定められた離婚原因なので、当事者の話合いで離婚ができなければ、裁判で争って離婚することができます。
他方で、性的関係がない一般的な不倫の場合は、不貞行為には当たりませんが、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるとして裁判で争う余地はあります。
 

不倫慰謝料の条件

夫婦の一方が配偶者以外の異性と性的関係をもち、不貞行為をしたとしても不倫慰謝料が請求できない場合があります。
不貞行為で慰謝料を請求するには、次の条件を満たす必要があります。
 

(1)性的関係がある

不貞行為にあたるためには、上述のように性的関係があることが必要です。
 

(2)夫婦が婚姻関係にある

不貞行為が成立する前提となる貞操義務は、結婚している夫婦で問題になります。
婚姻届を提出している法的な夫婦であることが原則ですが、夫婦同然の内縁関係では、準婚関係として貞操義務が認められます。
 

(3)夫婦関係が破綻していない

不倫慰謝料を請求できるのは、不貞行為で夫婦関係が破壊され精神的苦痛を受けたことが原因なので、破壊されるだけの夫婦関係があったことが必要です。
すでに夫婦関係が破綻している場合は損害が発生せず慰謝料請求も認められません。
 

(4)不貞行為をしたことに故意過失がある

慰謝料を請求するためには、不貞行為の相手が結婚していることに故意または過失が必要です。
配偶者が独身と偽り、信じる理由があったケースでは、相手に故意過失がないと判断されることがあります。
 

(5)自由意思にもとづく関係である

性的関係は自由意思に基づく行為であることが必要です。
夫が女性をレイプしたようなケースは自由意志に基づかないので慰謝料は請求できませんし、逆に犯罪として罪に問われます。
 

不貞行為の証拠

不貞行為で慰謝料を請求する際、夫婦の間で話し合って相手が応じるのならば証拠は何でも構いません。
しかし、相手が認めない場合には、裁判でも証拠として認められるだけの「不貞行為の証拠」を集める必要があります。
 

(1)不貞行為の証拠として認められやすいもの

裁判でも不貞行為の証拠になるものは、性的関係があったことを示すものです。
 

①写真や動画

ラブホテルに一緒に出入りしている現場、性行為中の様子の写真や動画など。
 

②音声

性行為中の音声や、性的関係があったことを伺わせる電話の内容の録音など。
 

③メールやSNSの文面

メールやSNSで、性的関係を認めたり、性的関係があったこと伺わせる文面など。
 

④領収書

ラブホテルの領収書。
 

⑤探偵の報告書

探偵が不貞行為について調査し、相手の情報などをまとめた報告書。
 

(2)不貞行為の証拠として認められにくいもの

①加工された写真、ラブホテル以外のホテルの写真

デジタル加工された写真、ビジネスホテルやシティホテルに出入りする現場写真。
 

②通常のメッセージ

メールやSNSでの日常的な会話、プラトニックラブのやり取りなど。
 

③ラブホテル以外の領収書

シティホテルやレストランの領収書、プレゼントと思われる領収書など。
ただし、これらの不貞行為の証拠になりにくいものも、他の証拠と一緒になることで利用できる場合があるので、見つけた場合には保存しておいてください。
 

不貞行為の証拠集めの注意点

不貞行為の慰謝料や離婚の請求は、請求をする側が証拠を集めなければいけません。
その際、気をつけなければ、証拠集めの方法が違法行為にあたると、逆に損害賠償を請求されたり、犯罪行為にあたる可能性もあります。
ここでは、特に注意が必要な行為をご紹介します。
 

(1)暴力・脅迫行為

不貞行為の証拠を集めようとして配偶者のスマホを無理やり奪い取ったり、不倫相手を脅迫して不貞行為を認めさせたような場合は、不貞行為の証拠がそれで得られたとしても裁判で認められません。
実際に、妻が不倫した夫に暴行を加えて携帯電話を奪い、不倫慰謝料を請求した事案で、暴力など反社会的行為で得られた証拠は証拠能力を否定すべきとして、携帯に残った不貞行為の証拠が認められなかった判例もあります。
暴力をふるったり、相手を脅すような行為は、刑法の暴行罪や脅迫・強要罪に当たる可能性があるのでしないようにしてください。
 

(2)データをすべてコピーする行為

配偶者のメールやSNSのやり取りをすべてコピーするような行為は、その中に不貞行為を示す証拠があっても、プライバシーの侵害に当たり裁判で証拠として認められません。
過去には、配偶者と不倫相手のメールの送受信データを全てコピーし、不貞行為の証拠として提出したものの証拠として認められず、個人間のメールは信書と同じなので、承諾なく不正にやり取りを入手することは犯罪にあたると示された判例があります。 手紙を勝手に開封する信書開封罪は刑法に規定される犯罪なので、データの全コピーも避けましょう。
 

(3)メールなどを覗き見る行為

配偶者のメールのやり取りを覗き見るような行為は、プライバシーの侵害にあたるとして裁判で証拠として認められないことがあります。
実際、配偶者と不倫相手の親密な内容のメールを覗き見た配偶者が、その内容を不貞行為の証拠として提出したものの、私的なメールは夫婦間でも通常見られることを前提としないので、親密なメールを覗き見ることは配偶者とメール相手のプライバシーの侵害に当たるとした判例があります。
プライバシーの侵害は、損害賠償を請求される可能性があるので、夫婦の間でものぞき見ないように気をつけましょう。

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